先月韓国で発売になった写真集。結局ガマンできなくて1冊だけ買ってしまいました(^^;)でもやっぱり何度も見ない予感が・・・あ、内容が悪いわけじゃありません。何度も引っ張り出して眺める性格じゃないんですよ~。
久しぶりのカテ更新は、ここからです。年末の暇つぶしに・・・・。 旅行記~日常と非日常の間に~① 高い窓から差し込む、まだ夏を思わせる日差しに、俺は思わず目を細めた。 「もう少し我慢して!」 写真を撮られるのは何年経っても慣れない。 何を要求されているのか、どう動けばいいのか。 経験を積めば体は自然と動くけれど、心の中はそう簡単には対応できないものだ。 旅人のまま、この街に溶け込んでいけるだろうか・・。 フランスに着いてすぐ撮影は始まった。 旅行者になったり、パリの住人になったり・・・初めてのパリに俺たちはわくわくしていた。 限られた日にちで消化しなければならないスケジュールではあるけれど、 いつものスタッフとのバカンスのような今回の仕事は、 皆の気持ちを高揚させ、和やかな雰囲気で進んでいた。 近くの民家を借りての撮影は、朝早くから始まったけれどまだ終わりそうにない。 昼はとっくに過ぎたよな? 窓越しの日差しは、意識だけ別世界に持って行ってしまいそうなくらい鋭かった。 古いけれど手入れが行き届いた家具は、雑然としているようで使い易く配置されていた。 住人は好きなものだけをひとつずつ丁寧に集めて、気持ちよく生活しているんだろうな。 「でもさぁ、片付きすぎてると落ち着かないだろ?」 「それはヒョンだけじゃないの(笑)」 「そうかなぁ~」 ふとソウルの家が恋しくなる。あの子達は大きくなったかな?寂しがってないだろうか。 文字通り旅行者になった俺たちは、 街の匂いを楽しみながら、戻る場所のあたたかさを懐かしみながら、撮影をこなしていった。 * * * * * 同じ場所での撮影が長くなると、時間の感覚が鈍くなっていく。 そんな俺の意識を呼び戻したのは、聞きなれた言葉だった。 ・・・・韓国語? 自分の撮影がひと段落したところで、騒がしくなった階下へ降りてみた。 家主の奥さんと何か揉めてるのかな? 「どうしたの?」 「ああ、友達を訪ねてきたらしいんだけど、引っ越した後だったみたいでね」 突然の来客は、以前ここに住んでいた友人を訪ねてきたようだ。 スタッフの中にフランス語が話せるヌナがいたので、事情を聞いていたらしい。 居場所を確かめもせずフランスまで来たのか?度胸のある人だな。 「ええっっ!どうしよう~!行き先は分からないんですよね?」 飛び込んできた来客は、小柄な割に声がデカい人だ(笑) 身振りで何とか伝えようとしているのか、やたらオーバーアクションだし。 冬支度のリスみたいにせかせかしてるよ。 ヌナまで一緒になって早口になっているのもなんだか可笑しかった。 「困ったなぁ~どこか泊まるところ探さないと」 「俺らのホテルに連れて行ってあげたら?ここから近いし」 「本当ですか!ああ~助かります!フランス語は話せないし、私の英語全然通じないし、どうしようかと思って」 「よく一人でここまで来れましたね・・・」 「気が張ってたんで、勢いでここまで来ちゃったというか。あれ?変なこと言ってます私?」 「勢いでフランスまで来るか普通?」 明るい笑い声に、周りの雰囲気が和らいだ。恥ずかしそうな優しい笑顔が伝染したようだ。 停滞気味だった撮影現場に、涼しい風が吹き込んだ。 「同じ韓国人だし、知らん振りできないだろう?」 「さすがマネージャー!とりあえずフロントで頼んですぐ戻るから!」 俺たちの撮影隊に遭遇できてラッキーな人だよな。 世話好きなヌナもいたことだし。 でも、言葉も分からないのにどうするつもりだったんだろう? 切れの良い話し方と人当たりの柔らかさが、そんな無鉄砲な行動を肯定してしまう、 俺と違ってすぐ環境に馴染んでしまうタイプなんだろうな。 玄関へ向かう二人とすれ違う時、彼女と目が合った。 慌ててお辞儀をすると顔を背けて行ってしまったけど・・・。 さっきまでの口調はなんだったんだ?黒目がちな瞳は溢れそうな涙で膨れ上がっていた。 * * * * * 明日は予定が詰まっているらしく、夜の撮影は早めに終わった。 「なぁ、今からどこか行かないか?」 「せっかくここまで来て、すぐ寝るのはもったいないよな~」 「程々にしないとまた目が腫れるわよ!写真集修正するつもり?(笑)」 「だって明日はもうそんなに時間取れないでしょ?」 「あ、あそこ・・・・」 言うが早いか、ヌナはカフェの方へ向かって歩いていく。 さりげなくヌナの後ろについて行くと、ピアノにいちばん近い席に、昼間の彼女が座っているのが見えた。 俺たちに気づくと、彼女はいち早く席を立ってお辞儀をした。 「今日は本当にありがとうございました。おかげで助かりました!」 「こちらにはいつまでいらしゃるんですか?」 「あさってには帰ります。友達も探せそうにないし、仕事も長くは休めないんです」 「私たちはあと3日撮影なんですよ。近くでまた会うかもしれませんね(笑)」 「ああ~今日はお仕事の邪魔してしまったみたいで、本当に申し訳ありません」 「ハプニングも無いと面白くないよね!」 そう口を挟むとヌナに怒られた。 「そりゃあね、君たちの起こすハプニングに比べたら今日なんてたいしたことじゃないわよねぇ?」 くくくっ、と小声で笑った彼女に、あの時目の端に捉えた影は見当たらなかった。 俺の見間違いだったのかな・・・。 「じゃあ、おやすみなさい。何かあったらフロントで私を呼んでくれればいいわよ」 「ありがとうございます!おやすみなさい」 「ヌナ、今日だけで随分親しくなったみたいだね」 「ん~最初は無鉄砲な子だなって思ったけど、話してみると礼儀正しいし、気持ちの良い子じゃない?帰ったらお礼がしたいって言うから職場を聞いてみたらね、事務所に近いのよ。奇遇よねぇ。これも何かの縁かしら」 「お、その時は俺も連れてってよ」 「冗談じゃないわよ、あなたがいると面倒が増えるだけでしょ。私の下手なフランス語聞いて笑ってただけじゃない。助けてくれても良いのに」 「フランス語は無理だって・・・・あ、携帯忘れた!ヌナ、先に行ってて」 「古い手よねぇまったく。早く戻らないと明日キツいわよ」 そんなつもりじゃなかったけど、そんな風に見えたかな? ゆっくり戻ると、ピアノの演奏を聴いているのかぼんやり頬杖をつく彼女が見えた。 本当に忘れただけなんだけどな。何て声かけようか? 「あの・・・・」 真っ直ぐ彼女の座る席に近付いたが、こちらを向く気配も無い。俺に気づいて無いのか? こんこん、とテーブルをノックすると、 びくっと体を震わせて振り向いた、その頬には涙が幾度も流れた跡があった。 「あ、ごめんなさい、忘れ物したから・・・」 想像していたどの反応にも当てはまらない彼女の姿に、かける言葉をなくしてしまった。 「じゃ、・・・」 気まずい雰囲気を断ち切るように、そう口にするのが精一杯だった。 そのまま踵を返すと、まっすぐエレベーターに向かった。 振り返らずに戻ることが、彼女にできる精一杯の気遣いのような気がした。
by kako-one
| 2007-12-30 10:50
| ♪もうひとつのTVXQ♪
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