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SHINE~どんな時も君は~冬、そして・・・Don't say Goodbye 1
以前にアップした「SHINE~どんな時も君は~秋」の続きです。





SHINE~どんな時も君は~冬そして・・・Don't say Goodbye 1



「あ、雪。」

先輩がつぶやいた。
ソウルからレッスンの帰り、バスの窓は白く曇り始めていた。

「なんでこのメンツで初雪見てんだかなぁ」
「ヒョクチェ、何メールしてんだよ!彼女か?」

二人の大声で目が覚めた。知らないうちに眠っていたみたいだ。
ちらちらと舞う初雪を見ながら、俺はぼんやり夢の続きを探していた。

うたた寝で見る夢は、いつも決まって授業中に居眠りして怒られるシーンだ。
そんなのは現実だっていつものことだけど、
先生に怒鳴られて目が覚めるって、たとえそれが夢の中でも気分は良くないよな。



机につっぷしたまま目をあけると、そこにはいつもミナがいた。
斜め後ろの席で、あいつはいつもまじめに授業を受けてるんだ。
黒板を真剣に見つめる顔、問題を解いてる顔、隣の奴と笑って話してる顔。
ゆっくりともう一度目を閉じる。
ああ、俺は、今日もここにいる。

時々、目を開けるとばっちりミナと目が合うことがあった。
そのたびに妙に期待しちゃうんだよな・・・お前の気持ちは、どこにあるんだろ?
怖くて聞けっこない・・・嘘が下手なお前だから、余計に。

最近、時折頬杖をついて、窓の外を眺めてばかりいるあいつ。
あれから・・・何かあったんだろうか?


一瞬で止んでしまった雪は、今度いつ降るのかな。
最近良く見る、あいつの寂しげな顔が、窓の外の暗闇に浮かんだ。




冬休みに入ってからも、俺たちは毎日レッスンに通っていた。
今さら受験も関係ないし、勉強以外なら辛いと思うことなんて何も無い。
練習室での時間は、あっという間に過ぎていく・・・まだまだやりたいことがあるのに。

もう明日は今年最後の日なんだよな~、帰り道でそんな話をしていた時だ。

「おい、明日の夜、出てこれるよな?」
「うん・・・いいけど、何で?」
「ユミンと新年の花火を見に行きたいんだけどさ、俺と二人じゃ許可出ないんだよ~」
「日ごろの行いが問題なんだろ?信用無いに決まってんじゃん」
「お前と大差ないだろ?でさ、ミナとお前と一緒だってことにしたんだ、頼むよ~。」
「ちぇっ、俺たちはダシかよ。名前だけ貸せばいいんだろ?」
「いやいや、そこまで嘘にしたら姉さんにチクられるからダメだ!」

二人の考えてることは分かるよ。
ついでに(あくまでもついでだ)俺とミナを付き合わせたいんだろ?
俺は話も下手だし、自分から誘えっこないし。
だけど・・・・今さらミナの気持ちを知ることが怖いなんて、お前らにも言えないよな。


* * * * *

ミナと初めて出会ってから、もう何年経っただろう?
いちばん前の席で、三つ編みの女の子からたくさんの祝福をもらったあの日。
あの日から、ミナは俺の大切な友だちであり、大事な幸運の女神になった。

がさつに見えるけど、人一倍周りに気を遣い、いつもあったかい笑顔をくれる。
恥ずかしくて口には出せないけれど、俺とヒョクチェにとっては家族の次に大事な存在だ。
だから・・・いままで不用意に気持ちを口に出すことは出来なかった。
俺たちは、大事な仲間だから。
その距離は、遠ざかることは無いけれど、決してそれ以上縮まることもなかった。


1年前、ミナが試合中の事故でバスケを諦めた時、
たくさん泣いた後、こう言ったんだ。

「来てくれてありがと。もうね・・・バスケ、できなくなっちゃったんだ。
 でも、もう泣かないよ。女神はいつも笑顔じゃなきゃね。」

ちょうど同じ頃、俺も辛いことばかり重なっていた。
声は出ないし、デビューも決まらない・・・。
レッスンは嫌いじゃないけれど、先の見えない未来に不安が無いと言えば嘘だ。
事務所に行く度緊張するのは、今でも同じだけれど・・・。

そんな時、いつもそばにミナの笑顔があった。
あいつだって、あれからも泣きたい時が何度もあったはずだ。
でも、いつも俺たちのくだらない話に相槌打ちながら、さりげなく励まし続けてくれた。
俺も、少しはお前に笑顔を送ってあげられただろうか?


* * * * *


「ぜったいに遅れるなよ。時間厳守!」
そう言って自分の家を待ち合わせ場所にするあたり、さすがヒョクチェだ。
俺がバス停から走っていく間に、自分はのんびり着替えてるんだろう。
あいつにはかなわないよ。

息が整った頃に玄関から顔を出したのは、姉さんだった。
「ヒョクチェから伝言よ。ミナ誘って公園の時計の下に来てって。」
「え~?あいつは?」
「ユミン迎えに行くって言ってたわよ。ミナんちは知ってるよね?三軒となり。」
「なんだよ遅れてくるなって言っといてさぁ・・・。」
「あははは~それ、気ぃ利かせたんでしょ?あ、ミナが出てきたわ。」

まさに三軒向こうから、ミナが出てくるのが見えた。
制服以外であいつがスカートはいてるなんて珍しいじゃん。
最近外で会うことは少ないからな・・・。

「あ、お姉さん久しぶり!ジュンス、来てたんだ。ヒョクチェは?」
「あんたたち謀られたのよ(笑)」
「なになに?何かあったの?ねぇ、お姉さんも一緒に行こうよ?」
「何言ってんのよ、いいから二人で行きな。本当においていかれるわよ(笑)」

にやつく姉さんに急かされて、俺たちは公園に向かった。
二人になることなんてめったに無いから緊張するな・・・。
あせるとついつい歩みが速くなる。
ゆっくり歩かないと、すぐ着いちゃうだろ。
スキップするような軽い足取りで、ミナは隣に並んだ。

「ジュンス、志望校決めたの?」
「うん?ああ、俺がいけるトコなんていくつもあるわけじゃないし。」
「まぁね。あ、ちょっと待って。」

くぐもったベル音が聞こえてきた。
携帯?ミナって持ってなかったんじゃ?
カバンからピンクの携帯を取り出し、メールを読むと返信もせずにすぐ閉じる。
性格のまんま、あっさりしてるよな。

「いいのか?」
「うん。お母さんだから。」
「仲良いよなぁ、お前んち」
「ジュンスんちもでしょ?私も兄さんか姉さんが欲しかったな~。」
「・・・俺たちがいるじゃん。」
「頼りになんないでしょ、あんたたちじゃ(笑)それに、私のほうが姉になりそうだ~」

ちぇっ、思い切ってかっこつけてみたのにスルーかよ。

「携帯、いつ買った?」
「あ、これ・・・まだ最近だよ。使い方もいまいちわかんなくて。」
「貸してみろよ、何がわかんないんだ?」
「え~とね・・・」

沈みかけた太陽が完全に隠れるまでに、時間はかからなかった。
ヒョクチェの家からいくらも歩かないうちに、ぽつぽつと街灯が付き始める。
薄暗闇に携帯の明かりがまぶしく感じられる時間。
いつもよりゆっくり歩きながら、携帯を覗き込む。
小さな画面を覗き込むまっすぐな瞳に、心臓が反応する。
落ち着け、これは指導なんだぞ。俺が教えてやってるんだからな。

「まず短縮がさ・・・」

短縮は・・・すでに入っていた。1番が自宅、2番が・・・病院?

「病院って・・・どこのだよ?どっか悪いのか?」
「え、あ、違う違う、ほら、おばあちゃんが入院してたから・・・それはいいから着信とかさ」
「じゃ俺3番に入れとくぜ。」
「何であんたが3番なのよ。」
「ほら、男の番号入れとくと何かあったとき安心だろ?」
「だからあんたじゃ頼りないって・・・」

取り返そうとする手を押さえつけて、俺はさっさと3番に登録した。
今やヒョクチェはまずユミンだし、何かあった時には俺だろ?
俺だけいれば十分だよな、うん。
ミナは意外とあっさり抵抗を止めて、もう他の事を考えてるような顔つきだ。

「もう・・・じゃあ次はね、着信音かな。」
「じゃ俺が送ってやるからそれにしろよ。」
「何であんたと同じにしなくちゃ・・・」
「とにかくこうして持ってろよ。いいやつ送ってやるから。」

公園までは、あと少し。
ゆっくり、ゆっくり歩いても10分?
俺じゃないぞ、ミナが教えて欲しいって言ったんだ。
教えてやりたいことがいっぱいあるんだ。だから・・・今日だけは、遠回りも悪くないよな?

せっかちな俺がそんなことを思ったのは、生まれて初めてだったかもしれない。




お互いの携帯を見比べて操作しながら、俺たちはゆるゆると歩いた。
待ち合わせ場所に到着した頃には、周りはすっかり暗くなっていた。
時計の下には、誰もいない。
ヒョクチェの奴、来ないつもりか?でもぜったいこの近くにいるはずだ。
花火はこの辺で見るのがいちばんキレイだって知ってるはずだから。

その時、携帯が鳴った。

「着いたか?」
「おい、どこにいるんだよ?近くにいるんだろ?」
「まぁな・・・あのさ、お前ら適当に遊んで帰れよ。俺たちは二人で遊びに行くわ。
 あ、ミナはちゃんと家まで送るんだぞ。絶対だからな。」
「な・・・・。」

言いたいことだけ言うと、やつはいきなり切りやがった。
姉さんの言うとおりだ。やられた・・・。

「何?どうしたの?ユミンは?」
「ヒョクチェにやられた。二人で遊びに行くって。」
「やっぱりなぁ。そんな気がしたんだ。ユミンを連れ出す口実でしょ・・・どうする?」
「どうするって・・・せっかくだし、花火見ていこうぜ」
「うん!」

いつになく嬉しそうなミナの顔を見ていたら、急に胸がどきどきしてきた。
照れ隠しに「行くぞ」とだけ言ってショッピングモールに入っていく。
え~と、こういうときは・・・どこに行けばいい?
ゲームは・・・ミナはやらないし、高いお店には入れないし。
二人だけなんて、何の話をしようか?
時間を潰すなら何か食べる?
俺も金はあまり持ってないしなぁ・・・。

その時、携帯が鳴った。

「ジュンス!どこ?歩くの早くて見失ったよ・・・。」

電話はミナだった。
振り返ると、いるはずのあいつがいない。
いつの間にか通りには人があふれていた。どこではぐれた?

「足速すぎるよ・・・。」
「どこ?どの店の辺りにいる?」

話しながら、増えるばかりの人ごみをかき分けてミナの姿を探す。
何色だ?コート、何色だったっけ?スカート、そうだ、スカートはいてたよな。
考え事をすると周りが見えなくなる自分を、初めて後悔する。
両側の店を交互に探しながら、焦る気持ちを抑えながら。

遠くに見えるCDショップの前に、携帯を握り締めて辺りを見回しているミナがいた。
周りの人に遠慮がちに、店の片隅に立ってきょろきょろしてる。

「見つけた!動くなよ!」

携帯を切ると、人を掻き分けてダッシュした。
ほんの数秒、でも俺にはその時、ミナだけがはっきりと見えてたんだ。
真っ直ぐに、あいつに向かって走る・・・心臓の音だけが耳に届く。
他には何も目に入らない。

しかし、現実は厳しかった・・・。
突然目の前に現れた俺を見るなり、ミナは思いっきりグーでお腹をパンチした。

「うっっ・・・・なんだよぉ・・・」
「ひとりじゃないんだから、後ろ気にして歩いてよね!もう・・・」
「3番入れといて役に立ったじゃん。」
「なによ、こんな時間にひとりで家出たこと無いんだから・・・。」
「姫だよなまったく。まだ早いじゃん。」

急に静かになる。
どうした?
うつむいた顔を覗き込むと、唇が震えている。
・・・やっと周りが見えてきた。
この時間にもう酔っ払ったオヤジがすぐそばで大きな声で電話をしている。
その向こうには、必要以上にべたつく大学生らしいカップル。

怖かったのか?
お前にも怖いものがあるんだな・・・。

はぁっとため息をつく彼女の肩が、いつもより華奢に見えた。
ごめん。と、心の中でつぶやく。
俺たちといつもつるんでるから、
俺たちと一緒だと思い込んでたよ。

ミナは、女の子なんだよな。

「迷子になったらあいつらに叱られるから、今日だけ。」

そう言って、俺は初めて、彼女の手を取った。
とっさに思いついた口実にしては上出来だろ?
毛糸の手袋が、暖かい。
そのまま俺のコートのポケットにぎゅっとしまいこんだ。
これは必要事項なんだ。そうだよな。
って、誰に言い聞かせてるんだ?
殴られるかと思ったけど、ミナはおとなしくされるがままにポケットの中に手を納めた。

ぎゅっと握り締める。
今日だけ、今日だけ。
迷子になるから、今日だけだ。

手をそっと握り返された瞬間、全身がかっと熱くなる・・・体温、上がったよな?今。
冷たい冬の夜風が、ほてった頬に気持ちいい。
そっと隣を見ると・・・頬を赤らめながら、同じように風に顔を向けるミナがいた。




年末のにぎやかな街で、久しぶりに二人で長い時間を過ごした。
レッスンの話や仲間とのいたずらの話、
照れ隠しに喋りまくる俺に、ニコニコしながら相槌をうつミナ。
楽しい時間は、こうしてあっというまに過ぎてしまう。

花火が見やすいように、俺たちは道路にかかる橋を目指して移動することにした。
まだ今なら人も少ない。どの辺がいいかな・・・。
座る場所を確保し、さっきまでいたファストフード店のチラシを敷く。

「お、気が利くじゃん。」
「ふん、このくらい普通だろ?」
「寒いね・・・」

くっついてた方があったかいんだよな。でも、どうやって言えばアヤシくない?
ウニョクの電話がよみがえってくる。
(俺たちは二人で遊びに行くわ。)
俺にはあくまで下心なんてないからな。
ただミナが風邪引いたらあいつらに怒られちゃうしさ。

言い訳を考えていると、急に左腕にやわらかい感触・・・・
ミナが肩をくっつけて、そっと握った手をポケットに入れる。
ほんのりと、陽だまりの匂い。ミナの香りがする。

「これで少しはあったかいでしょ?風邪引いたら大変。明日も練習なんでしょ?」

ちぇっ、やっぱりミナの方がしっかりしてるよな。
やっぱ弟にしかなれないか・・・。

じっと見つめる視線を感じた。

「あのさ・・・・」

何か言いかけては、黙ってうつむく・・・なんだよ?
近すぎて、横を向くのも照れくさくて、俺は花火の上がる方角を見たまま、返事をした。

「何?」
「あのさ・・・・私、アメリカの高校に行くんだ。」
「ええ?」

思わず体が反応して、ミナの方に向き直った。
そんな話初めてだろ。聞き間違いじゃないよな?

「なんだよそれ。いつ?何でアメリカ?どうやって行くんだ?」
「ちょ、ちょっと、声大きいよ~」

周りの人たちが怪訝そうに俺たちを見ている。
声が大きいから喧嘩みたいに聞こえたのかな。
でもそんなこと気にしてる場合じゃない。どういうことだよ?

「お父さんの仕事の都合でね、急に決まったから・・・」
「何でお前まで行くんだよ?高校決まってるんだろ?
ヒョクチェんちから通えばいいじゃん、親も仲良いんだし。
それにユミンもいるし、お前の行きたい高校だってさ・・・」
「ジュンス」
「ん?」
「もう決まったことなの。相談じゃないんだ。報告。」
「・・・いつ・・・・いつ行くんだよ?」
「卒業式の日。」

そんなの、あと何日あるんだよ。何だよ急に・・・。
頭が混乱して、何を言っていいのか、どうすればいいのかわからない。
思わずポケットの中の手をぎゅっと握り締める。
なんだよ、なんだよ、・・・・。

その時、花火が始まった。
周りの歓声が、耳鳴りのように、遠くから押し寄せるように、頭に響く。

「良かった。今日ジュンスと来れて。良い思い出になるよ。」

何で思い出なんだよ。勝手に思い出にするなよ。
何で勝手に行くって決めるんだよ。相談くらいしろよ。

言いたいことが次から次へと口まで出かかったけれど・・・
俺はただミナの手を強く、強く・・・握ることしかできなかった。

SHINE~どんな時も君は~冬そして・・・Don't say Goodbye 2につづく)


by kako-one | 2008-12-15 00:00 | ♪もうひとつのTVXQ♪
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